月刊『日本橋』2015年3月号 No.431
【今月の特集】
没後50年、生誕130年
日本橋生まれの 谷崎潤一郎
『刺青』『痴人の愛』『細雪』……
数々の名著を生み出した文豪・谷崎潤一郎。彼の文学の根底に流れる欲望の闇の深さはどこから生まれたのか。谷崎文学の研究者、千葉俊二氏が、幼少期を過ごした日本橋との関係にスポットをあてる—
「日本橋と谷崎潤一郎」
書き手/千葉俊二(早稲田大学教育学部教授)
今年は谷崎潤一郎の没後五〇年、来年は生誕一三〇年にあたる。そんなことで、昨年の秋には山梨県立文学館で谷崎展が企画され、この春の四月四日からは神奈川近代文学館でも谷崎展が開催される。そのほかにも今年から来年にかけて、谷崎イヤーとして各種の出版やイベントがめじろおしである。なかでも特筆されるのは、中央公論新社からこの五月に『決定版 谷崎潤一郎全集』全二六巻の刊行が開始されることである。〈文豪〉という名に似つかわしい存在は、谷崎をおいてほかにないが、これまでそれにふさわしい全集がなかった。生前の谷崎と縁の深かった中央公論社が創業一三〇周年ということもあって、〈大谷崎〉に見劣りのしない、文字通りの決定版全集が現在編集中である。
それに先だって一月には……(続きは本誌で!)
著者略歴 ●ちば しゅんじ 1947年、宮城県生れ。早稲田大学第一文学部卒、同大学大学院文学研究科博士課程中退。研究対象は、谷崎潤一郎、森鷗外などを中心とした、明治、大正、昭和期の近代小説全般。主な著書に、『谷崎潤一郎 狐とマゾヒズム』(小沢書店刊1994年6月)『エリスのえくぼ 森鴎外への試み』(小沢書店刊1997年3月)『増補改訂版 谷崎先生の書簡 ある出版社社長への手紙を読む』(水上勉との共著 中央公論新社刊2008年5月)『物語の法則 岡本綺堂と谷崎潤一郎』(青蛙房刊2012年6月)など多数。
★千葉俊二先生 講演会情報
〈谷崎潤一郎の恋文を読む〉
日時/4月18日(土)14時〜15時30分
場所/千代田区立日比谷図書文化館地下1階日比谷コンベンションホール
定員/200名(申込順・定員に達し次第締切)
参加費/1000円
申込み/03-3502-3340
〈『春琴抄』前後—谷崎の松子あて・佐藤春夫あて書簡を読む—〉
日時/4月26日(日)14時〜
場所/神奈川近代文学館展示館2階ホール
定員/220名
参加費/800円
申込み/ローソンチケット0570-084-003(Lコード38079)
〈特集目次〉
■日本橋と谷崎潤一郎/千葉俊二
■〜コラム〜パンの会
■谷崎潤一郎略年譜
■谷崎潤一郎ゆかりの店
・生誕の地〈にんぎょう町谷崎〉
・生家のご近所〈人形町玉ひで〉
・今はなきフランス風カフェ〈メイゾン鴻の巣〉
■代表作紹介
・谷崎の実質的処女作—『刺青(しせい)』
・少年時代を回想、有馬小学校が舞台—『少年』
・流行語“ナオミズム”を生んだ—『痴人の愛』
・谷崎の実生活を色濃く反映—『蓼喰ふ蟲』
・被虐主義をつきぬけた美の世界―『春琴抄』
・滅びゆく日本の美しい伝統的世界―『細雪』
★月刊日本橋は日本橋界隈のお店で配布しています。
ぜひ手に取ってご覧ください。 【配布しているお店】
【今月の表紙】一勇斎国芳 紀伊の国 髙野の玉川 大判三枚続の左
弘化四年〜嘉永五年(1847〜52)佐野喜版
【3月号不定期連載】
日本橋の若社長⑨
株式会社マイパックエステイト
(ドイツパンのタンネ)
代表取締役社長 佐藤由木子さん
—会社の紹介と思い出話しを聞かせてください。
明治41年に祖父が東神田で前川商店を創業し、材木や木箱の製造卸を営んでいました。木箱は、陸軍の弾薬や、山本山さんのお茶の箱などに使われていたそうです。昭和43年、父が株式会社マイパックエステイトとして登記し直し、日本橋浜町に会社を構え、ダンボールの製函や輸出用梱包などに商売を転向しました。
私は千葉の鎌ヶ谷で生まれ、小学校に入るとき浜町に越してきました。最初は引越すのがイヤでダダをこねていたのですが、料亭の黒塀が続く浜町や、賑やかな商店が立並ぶ人形町を見てこの町が大好きになったことを覚えています。つい、40年ほど前は、夕方になると人力車に乗ってお座敷に向かう芸者さんの姿が日常の風景でした……(続きは本誌で!)
【3月号連載】人物語252 重盛永造さん
日本橋、人形町、生まれ育った土地に恩返し
日本橋人形町。江戸時代、多くの人形師が住み、人形を商う店が立ち並んでいたことから人形町と呼ばれるようになり、昭和8年(1933)に正式な地名となった。現在でも、人形市をはじめ、せともの市やてんてん祭、近年はハッピーハロウィンなど数々のイベントが催され、年間を通して賑わいの絶えない町だ。そうした活性化の背景には地元の人形町商店街協同組合と、理事長を務める重盛永造さんの存在が欠かせない。人形町通りにある二台の“からくり時計”も重盛さんの発案によって製作されるなど、この町きってのアイディアマンだ。「地域が一丸となり、常に町に人を集める仕掛けを作る。その後は個々のお店の勝負です。“人集まらずして繁栄なし〟ですから」。
〝人形焼〟や〝ゼイタク煎餅〟でお馴染み、水天宮前に暖簾を掲げる〈重盛永信堂〉の三代目として生まれ、つい先日古希を迎えた重盛さん。「私は父が56歳の時に後妻との間にできた子どもなので……(続きは本誌で!)
【3月号連載】逸品 貝新 しぐれ蛤
しぐれ蛤は、晩秋に降ったり止んだりする“時雨”のように、噛むといろいろな風味が口の中を通り過ぎるからその名が付いたともいわれ、江戸時代から愛されてきた佃煮のひとつだ。写真の〈しぐれ蛤〉は、日本橋貝新謹製。口に入れると、醤油の香りと蛤の旨みがいっぱいに広がり、そして噛むほどに、また旨みがにじみ出る。味付けは、生姜、たまり醤油、砂糖のみ。保存料、化学調味料などの添加物は一切不使用、天然自然の旨みだ。日本橋貝新の佃煮は、甘過ぎず辛過ぎず、ちょうど良い加減で、万人に愛される味……(続きは本誌で!)
【貝新】
室町1-13-5 MAP・B6 電話3241‐2734
10時〜18時 土曜15時まで 日祝休
《写真》しぐれ蛤 75g 950円(価格はすべて税抜)